【映画紹介】「ザ・クリエイター/創造者」~AIへの拒絶とAIとの共存を緻密に描いたSF作品~

今回は「ザ・クリエイター/創造者」(原題「The Creator」)を紹介します。
10月末が期限の映画割引券を持っていたので映画館へ行くことになり、観たのが10月20日に公開されたばかりのこの映画。
元は違う映画を観る予定だったのですが、その映画では割引券が使えなかったため、急きょ本作を観ることになりました。
なので、前情報が全く無い状態で、あまり期待もせずに席に着いたのですが、
噛み応え抜群の内容で、今年一番の映画だったこと。
加えて、こんなに良い映画なのに十分な宣伝がされていないのでは?と思い、(全くもって微力ながら)少しでもこの映画を皆さんに知ってもらうため紹介させていただきます

最後の項目以外では、できるだけネタバレが無いようにします。
しかし、ネタバレ無しでどこまでこの映画の魅力をお伝えできるかわかりません…
それでも、最初の「あらすじ」だけでも読んでいただけると嬉しいです

最後の項目もストーリーの説明ではなく、映画を観る時に注目してほしい点について語ります。
「私の考察」や「皆さんにも考えてみてほしいこと」について書かせてもらいますね。
明らかなネタバレはしないつもりですが、ネタバレが嫌な人はこの項目を読まないでください。

今回はサンちゃんとスイちゃんはお休みしてもらって、映画の紹介に集中します。

サンちゃん
しかたがないわね

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映画のあらすじ

「ザ・クリエイター/創造者」の監督はギャレス・エドワーズ
2014年公開の映画「GODZILLA ゴジラ」や2016年公開の「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の監督でもあります。
これを踏まえて今回の映画を観るとより楽しめるかもしれません。

早速ですが、上の写真のポスターに書いてある「AI vs 人類」は映画の内容と合致していません。
加えて、一番上の写真の横断幕に書いてある「守ると誓った。兵器と呼ばれた少女を。」も違うかな、と思います。
なんでこんな煽りをつけたのか…

まず、この映画の公式サイトには下の概要が書いてありました。

<公式サイトから転記>
遠くない近未来、人を守るはずのAIが核を爆発させた——
人類とAIの戦争が激化する世界で、元特殊部隊の〈ジョシュア〉は人類を滅ぼす兵器を創り出した“クリエイター”の潜伏先を見つけ、暗殺に向かう。だがそこにいたのは、兵器と呼ばれたAIの少女〈アルフィー〉だった。
そして彼は“ある理由”から、少女を守りぬくと誓う。やがてふたりが辿りつく、衝撃の真実とは…

上にもあるように、このストーリーは核兵器の爆発から始まります。
AIによる爆発がアメリカ・ロサンゼルスを襲ったことで、AIを禁じた西側諸国(=アメリカ)とAIとの共存を選んだニューアジアの2つに世界は分かれました。
この映画はこの2つの世界の対立を描いたものであるため、単純な「AI vs 人類」ではなく、「AIを滅ぼしたい人たち vs AIと共存する人たちとAI」と説明するのが適切です。

主人公の男性は、「AIを滅ぼしたい人たち」側のアメリカの(元)特殊部隊員。
このアメリカ側の目的は、「AIと共存する人たちとAI」側のニューアジアのどこかにいる、AIを創り出した重要人物“ニルマータ”の殺害と、“ニルマータ”が創り出した兵器の破壊になります。
ちなみに“ニルマータ”はチベット語らしいです。

一方で、主人公の男性には色々な事情があった結果、彼が目的とするのは一つだけ「妻を見つけること」。
妻の手がかりを探して、概要にもある特殊作戦に参加するのですが、そこで発見したのがAIの少女<アルフィー>でした。

説明が遅くなりましたが、映画の中ではAIテクノロジーが発展し、“シミュラント(模造人類)”という人類と一部分を除いて、ほぼ違いのないAIが登場します。
(このシミュラント役の役者さん達に、監督から「人類と変わらない(つまり普段と変わらない)演技をするように」との指示があったらしいので、本当に人類と変わらない設定なのだと思います。)
違いが明らかなのは、彼らの後頭部。
上の写真のように、シミュラントの後頭部は機械がむき出しになっていて、耳のある場所には穴が空いています。

話をもどすと、主人公が見つけたのはAI(シミュラント)の少女<アルフィー>。
そして、このアルフィーがどうやら主人公の奥さんの場所を知っている様子。

これによって、この映画は、

AIを滅ぼしたい人たち(→ 西側諸国・アメリカ)
AIと共存する人たちとAI(→ ニューアジア)
世界なんてどうでもいいから妻に会いたい主人公(with アルフィー)

の三者によってストーリーが織りなされます。

ストーリーが進むにつれて、明らかになる事実、それによって変わりゆく主人公の心情、そしてアルフィーの成長。

上の説明は最初の部分なのですが、鑑賞にあたって絶対に知っておいてほしいことになります。
おそらくこの映画を単純な「AI vs 人類」だと思って観賞すると、よくわからないまま消化不良になる可能性があるためです。
この映画で出てくるAIは、映画「ターミネーター」や「2001年宇宙の旅」に出てくるAIとは全くの別物です。
また、映画「スター・ウォーズ」のように、どちらが正しい・間違っているといった、単純な勧善懲悪ものでもありません
これらを踏まえて、この映画をご鑑賞いただけると嬉しいです。

日本人に必見の価値あり

あらすじがとても長くなってしまったので、ここからはできるだけ短く書いていきたいと思います。

この映画には日本人必見である理由が幾つもあります。

そもそもの話になるのですが、実はこの映画は日本の昔の時代劇「子連れ狼」から着想を得た作品らしいのです。
確かに幼い子供を連れて旅をするおじさんの姿は、「子連れ狼」を彷彿とさせますね。

加えて、この映画には日本語の看板やセリフが何度も出てきます。
ギャレス監督は以前に映画「GODZILLA ゴジラ」を作製するなど、日本に縁があることや、
日本を代表する映画俳優である渡辺 謙 氏が出演していることから、
映画の色々なところに日本語が登場します。

と言うのも、この映画はニューアジア側での物事を中心に描かれるのですが、なんと日本は「ニューアジア」側です。アメリカとは別の選択をしたのですね。
このような背景があり、主人公たちが奥さん探しの旅をする中で、同じグループに属する日本の言葉が度々登場することになります。

このため、大変ですが、観賞中に“日本語探し”にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
(ちなみに私は「龍角散」みたいな看板を見つけた時に日本語が散りばめられていることに気が付き、日本語探し始めました)

映画を観ながら旅行気分

この映画はメジャースタジオ配給のSFアクション大作映画としては少ない8,000万ドル程度の製作費で作られたようです。
私には8,000万ドルは十分に大きい気がするのですが、同じギャレス監督の「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の製作費が20,000万ドルであったことを考えるとその半分以下の予算で作製したことになります。

しかし、私にとってこの映画の映像は非常に美しいものであり、低予算で作られたとは全く思えません。

では、この映画がどのように作られたのかと言うと、タイ、ベトナム、カンボジア、ネパール、日本、インドネシアなどのアジアを中心に8カ国80か所を訪れて撮影し、集めた映像素材にSF要素を追加して作製されたらしいのです。
なんと撮影チームの移動距離は1万マイル(約1.6万km)を超えていたとのこと。
これが理由なのか、映画を観ていると、アジア各国を旅行した気分を味わうことができます

実際のところ、主人公たちの旅はけっして楽しいものではありません。
しかし、それでもこの映画の中の美しい風景には心奪われてしまいました。

原風景と科学が織りなす理想郷

ネタバレありとなる前の最後に伝えたいのは、SF作品ならではの話。
この映画では、私たちがこうあってほしいと願うアジアの原風景と、AIをも生み出した高度の科学が、お互いを損なわないように共存する姿が描かれています
実際には、科学の発展・普及がもたらすアジアの将来像は全く異なるものになると、思います。
おそらく原風景と呼ばれるものと科学の共存は、とてもとても難しいことでしょう。

この映画におけるニューアジアは、私の目に「理想郷」のように映りました。
私はたくさんのSF映画を観ているわけではないので、もしかしたら同じような世界を描いた作品が他にもあるかもしれません。
しかし、それでもこの作品が創り出した理想郷はぜひともご覧いただきたいと思います。

 

ネタバレ無しの紹介は以上になります。

日本に縁のある作品であること、と映像が綺麗なことしか伝えられていませんが、本作はSFとしてとても考察のしがいがある内容となっています。
私が上記で説明したことはおまけ程度に、「そこまで言うなら観てみても良いかな」と思ってもらえると、とても嬉しいです。

ネタバレが絶対に嫌な方は、ここまでにしてください。

 

観賞時に注目してほしい点(ネタバレあり)

ここからは、この映画を楽しむために伝えたいこと、もしくは観ている時に考察してみてほしいことを書かせてもらいます。
どうしてもネタバレとなる情報が含まれてしますため、繰り返しになりますが、それが嫌な方はここで読むのを止めてください。

まず、ギャレス監督は、映画「スター・ウォーズ」(エピソード4)に非常に大きな影響を受けたと語っています。
子供の時に「反乱同盟軍に参加してデス・スターを破壊するんだ」と夢見ていたのだと。
そして、監督は「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」で夢を叶えました。
さらに本作でもスター・ウォーズをオマージュしていると受け取れる部分があります。
これを踏まえて、この作品を考察してみると、新しい発見があるかもしれません。

次に、この映画のストーリーは西洋と東洋の宗教観の違いが大きく影響しているのではないか、と私は感じました。
映画の中のニューアジアでは、AI(シミュラント)の僧侶が登場します。
科学とは一番遠くにあると思われる宗教においても、ニューアジア(東洋)ではAIを受け入れていることがわかります。
では、西洋ではどうなのでしょうか?
映画の中で明確に示されているわけではありませんが、「AIを滅ぼしたい人たち」である彼らが受け入れるはずがないと、私は思います。
この西洋と東洋のそれぞれの根底にある宗教観を軸にすると、登場人物の行動やセリフにより深みが出るような気がします。

映画の中でAIに関するルールのようなものが幾つか示されています(もしくは、暗示されています)。

・AIは創造者を殺すことができない
・アルフィーを除いて、子供のAIはいない
(子供のAIは作ってはいけない?)
・シミュラントのために、人間に対して「姿形の提供」を求めている
(つまり、この世に存在しない姿形のシミュラントは作ってはいけない?)

という点を私は拾い出しました。

アルフィーは少女の姿なのですが、作中で彼女に対して「子供のAI?」と驚く人が何人か出てきます。また、映画の中で子供たちがたくさん出てくるのですが、アルフィー以外はみんな耳があるので、人類だと予想されます。
もしかしたら技術的に作ることができない(難しい)だけなのかもしれませんが、子供のAIは作ってはいけないというルールが存在する可能性もあるのでは、と。
子供のAIにニーズが無いとは思えないので、何か理由があるのではと想像しています。

また、作中に人間に対して「姿形の提供」を求める宣伝が流れているシーンがあります。
そして、おそらく提供された姿を利用したと思われる、同じ姿のシミュラントが複数体、作中に登場します。
(ちなみにこれは本作のクライマックスに向けてとても重要な伏線です。)
姿形なんて勝手に作ってしまえばいいのにと思うのですが、人間として存在する姿形をシミュラントがコピーしなければならないというルールが暗示されています。
もしかしたら存在しない姿形を作るのが難しいのかもしれません。
しかし、例えば、姿形にも著作権のようなものが保障されていて、「勝手に作った姿形」が「どこかの誰かの姿形」と被ってしまう可能性を否定できない以上、勝手に姿形を作ることは禁止されているのでは、と予想しています。

このように、映画の端々に出てくる情報を考察してみるのも、よく考えられている(と思う)作品だからこそ楽しめることだと思います。

そういえば、作中で「AIが人類を攻撃したのは、人類から仕事を奪うため」という人間のセリフが出てきました。
これは、現実世界でAIに反対する人たちが主張する「AIが仕事を奪ってしまう」という批判そのものだと思いました。
上の作中のセリフをどのように捉えるかは、作品を観てから判断いただければと思いますが、これと同じように作中には現実とリンクする事柄が幾つも出てきます。
映画でどのような表現がされているのかを確認し、その後で現実社会の問題と照らし合わせて考えてみてください
それが優れたSF作品の楽しみ方の一つではないかと思います。

そして、最後に私が疑問に思っている事を紹介させてもらいます。
この映画をご覧になった皆さんにも、ぜひとも考えてみていただければと思います。

・とある場所に大量のシミュラントが保存されていました。
そこはシミュラントがあるはずないところなのですが、何故シミュラントがそこにあったのでしょうか?
アメリカは本当にAIを滅ぼしたい「だけ」だったのでしょうか?
劇中の彼らの行動から、それだけではないのでは?と想像してしまいます。

この二つの疑問について、もしかしたらこうなのかな?と思うことがあるのですが、もしもその考察が当たっていたら、片側の人たちへの印象が最悪になりますね…
(元から悪い印象ですが)

そして最後に、

・映画が終わった後の作中世界はどうなっていくのでしょうか

これはとても想像のしがいがある質問だと思います。

私の「ザ・クリエイター/創造者」の紹介は以上になります。
この映画は考察しがいのある大変優れた作品だと太鼓判を押させていただきます。
ぜひとも皆さんにも映画館に足を運んでもらえればと思っています。

最後にこの映画のパンフレットを購入しました。
実は、今回紹介した中にも、幾つかパンフレットからの情報を引用しています。

そして、このパンフレットには、日本の第一線の研究者がAIについての考察が載っていました。
パンフレットを購入したのは本当に久しぶりなので、最近の他の映画のパンフレットに何が書かれているのかわかりませんが、本作品の本気を感じた小ネタでした。

 

<最後までお読みいただき、ありがとうございました。>
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